君に愛の唄を
帰りの車の中も重い空気が流れていた。
私は、流れゆく景色をボーッとしながら眺めていた。
そして男女で寄り添い、腕を絡ませている一組のカップルの後ろ姿が目に止まった。
仲良さそうだな…
そして、カップルの横顔が見え、車がカップルを追い越した時に見えた顔……
知らない男の人と、
奈々さんだった……
えっ?
う、嘘でしょ?
奈々さんが浮気するわけ…
「どうかしたか?」
陸は、私の動揺を感じ取ったのか私の顔を覗き込んできた。
私は陸から目をそらし、顔を横に振った。
奈々さんが浮気なんて、
何かの見間違いに決まってる。
私は自分にそう言い聞かせた。
でも、もし本当だったら?
チャンス…なのかな?
……本当なわけないか。