君に愛の唄を



不思議なことに涙はでなかった。


胸の辺りはぎゅうっとなったけれど、素直におめでとうと思えた。



どうか、陸と奈々さんがずっと変わらない愛で結ばれますように…



私はそう心の中で祈った。



別に陸への気持ちが薄れたわけではない。

本当に、素直に幸せになってほしい…そう思っただけ。



私は、スッキリと陸を心の中から消せそうな予感がしていた。



私の大切な恋。

私の叶わなかった恋。

私の終わった片想い。



このまま陸が結婚すれば、そう丸く収まると思えた。



ただ、終わったんだ、と。





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