君に愛の唄を
私は、短い春休みを紗英と騒いで楽しく過ごした。
そして、始業式の日…
私は、朝から屋上にいた。
もう、とっくに始業式は始まっている。
私の手は携帯電話を握り締めていた。
その携帯電話の画面は、『お兄ちゃん』を映し出していて、ボタン一つ押せば電話がかかる状態だった。
去年の私を思い出した。
去年の私もなかなか陸に電話かけらんなかったもん。
なかなか勇気が出なくて……でも、私の意思が伝わったように陸が電話かけてきてくれたよね。
びっくりしたけど、嬉しかった。
ただの偶然でも私は嬉しかった。
「けじめをつけなきゃ…」
私は深呼吸をして、そう自分に言い聞かせるように呟き、意を決して通話ボタンを押した。
──プルルル…
出てほしいようで、出てほしくない。
伝えることが怖い。
──プルル…プツ…
「はい、もしもし?心菜か?」
……出た。