君に愛の唄を
陸も蓮も…、きっと辛い環境で育ったんだろうな。
だからこそ、優しい。
辛い気持ちを知っているからこそ、人に優しくできるんだろうね。
「なぁ…俺にしとけよ」
──え?
「俺は心菜が好きなんだ…」
私は自分の耳を疑った。
「どうせ、からかってるだけだ」そう思って蓮の顔を下から見上げた。
でも、予想外に蓮の瞳は真剣で私はその綺麗な瞳に吸い込まれそうになった。
「蓮…」
私、蓮のこと好きだよ。
でも、それは「友達」として……
蓮は友達にしか見えないよ。
それに、失恋したばかりなのに…
「これ……」
蓮は私に見覚えのある小さな可愛い袋を差し出した。
…なんだっけ、これ。
「返事、待ってるから…」
「ちょっと…」
蓮は無理矢理"それ"を私に持たせると、屋上から出て行った。
……何も言えなかった。