君に愛の唄を



私は"それ"の中身を丁寧に取り出して、はっきりと思い出した。


……あの時の指輪だ。



「…やっぱり、そうだ……」



箱を開けたら可愛らしい指輪が顔を覗かせていて、春の陽気でキラキラ輝いて見えた。



「プレゼント…って私のために?」



あの日、確かに蓮は"プレゼントを買いに"と言って買い物へ行った。


でも、私のためにではないだろう。


どうせ本命の子に渡せなかったから私に渡したんだ。


きっと、そう……



『なぁ…俺にしとけよ』



きっと……



『俺は心菜が好きなんだ…』



どうすれば、いい?


蓮を失いたくないよ…

だけど、蓮と付き合うっていうのはなんか違う気がする。



ねぇ、いつから?

いつから想ってくれてたの?



私はずっと、気づけなかった───



< 93 / 310 >

この作品をシェア

pagetop