極彩色のモノクローム
吹き付ける風に、
頬を伝った涙が
冷たく凍り付いた。
追って来た父に、
腕を掴まれる。
「違う…違うんだ奈津…!」
言われて、
私は掴まえる手を振りほどこうとするのをやめた。
「何が、違うの?」
振り返って、真っすぐ父を見つめて問う。
「奈々がいなくなってから、全部おかしくなった。そうでしょ?」
ママが私に辛くあたるようになったのも、
パパがママのそれを
叱らなくなったのも、
奈々がいなくなってから。
奈々がいなくなって、
私はひとりぼっちになった。
私の問いに、父はただ俯く。
掴まれた腕を、振りほどいた。
「生き残ったのが、
やっかいな奈津だったからでしょう?
もしあの時死んだのが奈津だったら、
こんな事にはならなかった。
違う?」
父は、
何も言わなかった。
私は踵を返すと、
振り返らずに歩いた。
涙は止まっていた。
ジクジクと膿んだ傷口から、
血が滴り落ちるだけ。
私なんて、
いなくなればいい。
私は
いらない子だから。