極彩色のモノクローム
15:一つだけ叶うなら。
タクシーを捕まえて、
私は喫茶店の住所を告げていた。
最後に、
一つだけ叶うとしたら。
私の願いは、一つ。
タクシーから降りて時計を覗いたら、
ちょうど午後8時を過ぎたところだった。
ドアにはCLOSEDの看板。
私はそっと、
その扉を叩いてみる。
カチャリと開いたドアから、マスターが顔を出した。
驚いた顔をした彼を見て、
きっと目が真っ赤なんだって理解した。
黙って開かれるドアに、私は店内に滑り込む。
鍵が閉められた音。
シンと静かで、照明の落とされた店内。
キッチンからの僅かな明かりが、
店内に柔らかく広がっていた。
黙っている彼を、
私は振り返った。
そして、
その肩に額を押し付けるように、
体を寄せた。