極彩色のモノクローム


更に、海辺を走る電車に乗り換える。


やっと白んできた空が、

白く光って眩しく見えた。


砂浜の目の前の駅で電車を降りる。


コトコト走る2両の列車を見送って、
私は浜辺に下りた。


あの日、奈々が消えた海。


あの日、座っていた場所に座る。


あの日はまだ、見えていた色。


奈々の着ていた、水玉模様の水着。


海に溶けるみたいに見えた、水色の。


あの日はごった返していた浜辺に、
今は私しかいない。


冷たい風が吹き付ける。


灰色のうねりが、遠くから打ち寄せてくる。


私はスケッチブックを取り出そうとして、
手を止めた。


鞄に入っていない。


何処に置いてきたんだろう。


私は仕方なく鞄を閉めると、立ち上がった。


波打ち際に向かって、歩き出す。


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