極彩色のモノクローム

私は、
自分の思い通りにならない事を
もう十分に我慢して来たはずだ。

そうでしょう?

喘息で入退院を繰り返して。
視界が白黒になって、
さんざん虐められた。

弟が生まれたら、
家に私の居場所がなくなって。

成績が少しでも悪くなれば、酷く叩かれたりした。

それだって、自分が悪いんだって堪えて来たのに。

楽しかった高校を、二年で辞めさせられた。

クラスの男子と付き合い始めたのがバレたから。

意味がわからなくて、
どうしてそんな事で学校を辞めなきゃならないのか。


それで、家を飛び出した。


行き場も無くて、
いつの間にかあの喫茶店の前にたどり着いて。

冷たい雨が降っていて、
私は発作で地面に座り込んだ。

このまま死ねばいいと思った。

でも、マスターに見付けられて、
私はあの店に入り浸るようになったのだ。


唇を舐めると、

しょっぱかった。


最後に交わしたくちづけは、

優しいのに、
乱暴で、
すべてを奪われるようなキス。


私は幸せだった。


アナタに会えて。



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