極彩色のモノクローム
閉まったドアを見つめたまま、
私は動けずにいた。
店では二人きりになる事だって普通だったし、
第一、
一度寝てしまっている。
なのに、
私は今、
緊張してる。
始めてのデートみたいな。
そういえば、
店以外で会うのは初めてなのだけれど。
「弱った肺に、塩水は有り得ないって言ってたぞ。」
マスターはそう言って、
立ち上がった。
ベットの縁に腰掛けた私の、
目の前に立つ。
「また死にそこなったよ。死ぬつもりだったし、死にたかったのに。」
私は呟いた。
そうよ、
死にたかったのに。
本気だったのに。
なんで私は、
まだ
生かされているんだろう。