極彩色のモノクローム

閉まったドアを見つめたまま、
私は動けずにいた。


店では二人きりになる事だって普通だったし、

第一、
一度寝てしまっている。


なのに、

私は今、
緊張してる。


始めてのデートみたいな。


そういえば、
店以外で会うのは初めてなのだけれど。


「弱った肺に、塩水は有り得ないって言ってたぞ。」


マスターはそう言って、
立ち上がった。


ベットの縁に腰掛けた私の、
目の前に立つ。


「また死にそこなったよ。死ぬつもりだったし、死にたかったのに。」


私は呟いた。


そうよ、

死にたかったのに。


本気だったのに。


なんで私は、

まだ
生かされているんだろう。



< 125 / 173 >

この作品をシェア

pagetop