極彩色のモノクローム
「謝るくらいなら、ぶつな。馬鹿。」


私はようやくそう言って、笑って見せた。


痛かった。


本気でぶたれたし、

本当に痛かった。


痛かったのに、嬉しかったんだ。


こうやって、私を叱ってくれる人はいなかったから。


ママみたいに、
私をひたすら責めるか、
腫れ物扱いで。


だから、嬉しかった。


嬉しかった。


笑ったつもりだったのに

灰色の視界はぐにゃりと歪んで

ハラハラと零れた涙が、

きっと彼の手も

濡らしているだろう。


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