極彩色のモノクローム

目を細めたマスターが、

私を見つめていた。


そんな顔、ずるい。


そんな風に、
愛しい人を見つめるみたいな目、

ずるいよ。


反らせなくなる。


私は今、どんな顔してるんだろう。


真っ赤になって

ゆでだこみたいとか言われるんだろうか。


ゆでだこみたいな赤は、
私にはわからないけれど。


「名前で呼べよ、奈津。」


言われて、
私はその顔を見つめたまま舌を出してみせた。


マスターは笑って、

私の髪をゆっくりと撫でた。



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