極彩色のモノクローム
「奈津ちゃん、相変わらず客かバイトかわかんないね。」
真船さんに言われて、
私は曖昧な笑顔を向けた。
別に給料は貰っていない。
ただ、
この店のカウンターの一番奥の椅子は私専用になっている。
そこで、
この店にやってくる客をデッサンするのが私の毎日だった。
だから、
場所代としてちょっとした事なら手伝うようになった。
「珈琲と、奈津ちゃんの愛を。」
真船さんは笑いながらそう言った。
「マスター、ブレンドワンです。」
私は振り返って、
カウンターの向こうのマスターに声をかける。
そして、
真船さんを振り返るとニコリと笑いかけた。
「僕の愛、けっこう高いよ?」
言ったら、
真船さんはハハハと笑った。