極彩色のモノクローム
「珈琲は味だけじゃないだろ?香りも違うから。俺でも出来るかなってさ。」
マスターはそう言って、
私の唇を掠め取った。
触れた唇から、
気持ちが伝わるなんて。
馬鹿らしいと思っていたのに。
馬鹿な事は考えなくていいって
言われている気がした。
「そいつとは喧嘩別れだから、もう会いたくもないけどさ。」
マスターはそう言って、
私の髪に唇を寄せる。
「それがあったから奈津と会えたんだし、多少は感謝しないとな。」
言いながら、
額に、
瞼に、
頬や、
鼻先に、
次々と降ってくるキス。
くすぐったくて首をすくめたら、
下唇を舐めとられて、
体が震えた。