極彩色のモノクローム
身仕度を終えて、
そろそろと階段を下りた。
扉に耳を付けて様子を伺うと、
真船さんの声が聞こえた。
扉を少しだけ開けて確認すると、
何時もの席にいる真船さんが見えた。
他に、お客さんがいないのを確認して、
私は扉を勢いよく開けた。
「やぁ奈津ちゃん。おはよう。いや、早くはないか。」
真船さんはそう言って、
いつも通りに笑ってくれた。
「おはようございます、真船さん。」
だから私も、
いつも通りにそう言った。
真船さんは目を細めて頷くと、
自分の前の椅子を指差した。
「座って。」
言われて、
私はマスターを見た。
カウンターの向こうにいるマスターは、
目が合うと目を細めて頷いた。