極彩色のモノクローム


それから、

2ヶ月。


街にも、

この喫茶店にも、

もれなく春がやってくる。


「あのね。」


昼下がりの店内。


デッサンをする私と、

カウンターの向こうのマスターしかいない。


春の柔らかな陽射しが、

店内を温めている。


私がそう、声をかけると


マスターは

「ん?」

と返事をして、手元から目を上げた。


最近始めた、インターネット通販の豆をブレンドしているらしい。


味覚の曖昧なマスターは、
ブレンドを作るときはほんの数グラム、
ほんの一粒に気を配っているらしい。


それでも、私が来てからは少しは雑になってはいるようだ。


私に味見させてから出せばいいから。



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