極彩色のモノクローム


私の目は、

色を映すのをやめてしまった。



奈々の葬式の日から、ずっとだ。


白黒の世界で、
私は鉛筆を走らせる。



絵を描くなら、

白黒しか見えなくても十分だ。



白黒の絵だって、認めてもらえる場合もある。


その可能性は、
私が今からスポーツ選手になるよりはずっと高い。



目が見えなくなってしまうよりは、
マシだったと思うようにしている。



小さい頃から沢山の事を諦めて来た私は、
諦めるのに慣れすぎているのかもしれない。



喘息は、小学校を卒業する頃には少し良くなっていて、

普通に生活する分には問題ないくらいになっていた。



ただ今も、
肺が弱っているから激しい運動はなるべく控えるようにとだけ言われている。


だから、
結局私は運動会や体育祭には一度も参加出来なかった。


マラソンも、
リレーも、
水泳も、
縄跳びも、
私はやった事がない。


そして、
知らぬままに死んでいくんだろう。


< 18 / 173 >

この作品をシェア

pagetop