極彩色のモノクローム
両親は、私が10歳の時に生まれた弟を異常に可愛がっていて、近寄りたくもなかった。

今は、この着信履歴の男が借りてくれている部屋で寝泊まりしている。

私は世で言う愛人で、彼は私を離す気は無いようだった。

好都合だ。

こういう時は、
女に生まれて来た事に感謝する。

体を売れば、買ってくれる男はいくらだっているから。

多少酷い扱いをされても、
殺されなくて、
金をもらえるならそれでいいと思う。

「もしもし。何処に行けばいい?」

電話の相手に問うと、

「いつものところで。」

と言われた。

私は返事をして電話を切る。

携帯を閉じたら、タトゥーが目に入った。

そこにそっと唇を寄せると、私は歩みを早める。

今の私を見たら、
奈々はなんて言うだろう。

考え始めた私は、
途中で馬鹿らしくなってやめた。



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