極彩色のモノクローム
待ち合わせは、いつも人目につきにくい公園の前。
冷たい風が吹き抜けて、
私は指先に息を吐きかけた。
カサカサと鳴る木の葉が、地面に近い場所で舞い踊るのをぼんやり眺める。
車の走行音に目を上げると、見慣れた外車が滑り込んで来た。
私は黙って助手席に乗り込む。
「久しぶりだね。」
と彼は言った。
そう言うけど、
1週間に1度は必ず会っているから、久しぶりと言うほど久しぶりではない気もする。
そうは思っていても、私は頷いて
「会いたかった。」
と呟くのだ。
これくらい可愛い事を言ってやったほうが、男は喜ぶ。
案の定、彼は満更でも無いらしく、
ニヤニヤと顔を緩めて私の髪を撫でた。
フワリと消毒液のニオイが香った。
彼は、医者だ。
私の担当医だった。
奈々がいなくなった年の春に、新人医師として病院に入った彼の、
最初の患者が私だった。
だから彼は、奈々を知っている。
そして、彼は私に同情している。
わかっている。
彼は奈々と私を比べているんだ。
奈々が死んだ時、母が口にしたあの言葉を、彼は聞いてしまったらしい。
だから彼は、私を可哀相な子だと思っている。
私はそれを甘んじて受け入れた。
可哀相なんて思われるのは大嫌いだったけれど、
それでいいと思った。
冷たい風が吹き抜けて、
私は指先に息を吐きかけた。
カサカサと鳴る木の葉が、地面に近い場所で舞い踊るのをぼんやり眺める。
車の走行音に目を上げると、見慣れた外車が滑り込んで来た。
私は黙って助手席に乗り込む。
「久しぶりだね。」
と彼は言った。
そう言うけど、
1週間に1度は必ず会っているから、久しぶりと言うほど久しぶりではない気もする。
そうは思っていても、私は頷いて
「会いたかった。」
と呟くのだ。
これくらい可愛い事を言ってやったほうが、男は喜ぶ。
案の定、彼は満更でも無いらしく、
ニヤニヤと顔を緩めて私の髪を撫でた。
フワリと消毒液のニオイが香った。
彼は、医者だ。
私の担当医だった。
奈々がいなくなった年の春に、新人医師として病院に入った彼の、
最初の患者が私だった。
だから彼は、奈々を知っている。
そして、彼は私に同情している。
わかっている。
彼は奈々と私を比べているんだ。
奈々が死んだ時、母が口にしたあの言葉を、彼は聞いてしまったらしい。
だから彼は、私を可哀相な子だと思っている。
私はそれを甘んじて受け入れた。
可哀相なんて思われるのは大嫌いだったけれど、
それでいいと思った。