極彩色のモノクローム
シャワーの音がやんで、
私はタトゥーを撫でていた手を止めた。

浴室から出て来た彼は、
フワリと微笑んでベットに座る。

私は黙ってその顔を見ていた。

髪を撫でられて、引き寄せられる。

重ねられた唇は、煙草の味がした。

私の前では決して吸わないこの男は、
どこまでいっても医者なのだと思う。

深くなる接吻に、私はただ身を任す。

私は毎回繰り返されるこの行為に、
快感を見出だせないでいた。

掻き回される舌に、息苦しさを感じるだけだ。

飲み込み切れない唾液が、顎を伝う気色悪さに鳥肌がたつ。

それでも私は、拒否しようとは思わない。

彼が望む通りに、してくれればいい。

私には彼の金が必要だ。
その代価として、体を差し出すことに抵抗は、ない。

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