極彩色のモノクローム
「はい、これ。」


渡された封筒を受け取る。

それなりの厚みと重さのあるそれを、
私はバックに放りこんだ。

「じゃあ、帰ろうか。」

言われて、私はまた頷く。



私は、いつまでこれを続けるのだろうか。



私と別れた彼は、家に帰る。

愛する妻と、
二人の幼子の待つ家に。


私は、
冷たいベットの待つ部屋に。


不満は無い。


ただ、

一人でない夜が恋しくなる時もある。


無性に、
人肌恋しくなる夜。


その寂しさを、この人は癒してはくれない。


ホテルを出た車は、
この男と別れたりしたら住むことの出来なくなるマンションに向かって走り始める。


夜は苦手だ。


白黒しか映らない私の目には、
微かな街灯の光では
暗闇ばかりが目に映って歩けないのだ。


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