極彩色のモノクローム
5:蛾
車のテールランプが見えなくなると、
私の視界は
黒に染まった。
何処までも続く、
闇の底に堕ちていくような錯覚に、
背中がひやりとした。
「アホらし。」
呟いて振り返れば、
マンションのエレベーターホールの明かりで、
少し視界が良くなった。
それでも私は、
慎重に足を進める。
足が、段差にぶつかって
少しよろけた。
これだけ慎重になっても
これだから嫌になる。