極彩色のモノクローム
これには、驚いた。
頬が熱いのは、
たぶん
熱のせいだけではない。
「これ。」
差し出された小さな紙。
ペーパーナプキンの端に書かれた
携帯の番号と
メールアドレス。
「閉店前にメールくれれば、待ってる。」
私は、ただ頷いた。
頷くしか、
出来なかった。
いきなりすぎる関係の進展に、
頭が全然ついていかない。
私はホットミルクを飲み干すと、
立ち上がった。
「明日は、来るから。」
私が言うと、
マスターは頷いた。
「気をつけて帰れよ。」
言われて、私は頷くと、
店を出た。
振り返らずに。
期待なんてしたくないのに。
どうして、
期待させるような事をするんだろう。
私は、フラつく足も気にせず
足早に家を目指した。