極彩色のモノクローム

家に着いて
鍵とチェーンを閉めて。


私はズルズルと
玄関に座り込んだ。


手に握りしめた
ペーパーナプキンの切れ端を
目の前に掲げる。



『atsuya-koizumi』



メールアドレスの頭には名前が使われていた。


胸が高鳴る。



初めて知った。

名前。



こんなの、おかしい。


ドキドキする。


こんな風に、恋するなんて
思わなかった。


こんな気持ちがあるなんて、

私、知らない。


鞄から携帯を引っ張り出す。


登録しようとして、
名前をどうしようか困った。

少し考えて、
私が打ち込んだのは。



『コイズミ アツヤ』



登録が完了しました

というメッセージを確認して、
私は携帯を閉じた。



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