極彩色のモノクローム
「なにこれ。」
思わず呟いたら、
母に睨まれた。
それだけで、
私の体は硬直して、
思考回路が停止してしまう。
「座りなさい、奈津。」
言われて、私は
とにかく母の横に座ることにした。
挟み込むように、父が私の隣に座る。
熱があるからだろうか。
地面が揺れている気がする。
「さ、自己紹介から始めましょうか。」
母が言った。
これはたぶん、
お見合いだろう。
「では、こちらから。」
知らないおばさんが言った。
この人、何者なんだろうか。
「僕は、鮫島成仁といいます。25歳で、倉橋部長の部下…です。」
ゲッと口にしそうになるのを
寸でのところで
押さえ込む。
「さ、奈津。」
笑顔で促す母が怖くて、
私は目の前の男を見た。
見た目で人を判断するのはいけないと思う。
けれど、
この男はちょっと無理かもしれない。
生理的に受け付けない男を、
久し振りに見た。
「奈津、19歳。」
言ったら、
母の視線がこちらに向けられた。
刺すような視線に、
「…です。」
と付け加える。