極彩色のモノクローム
結局、
携帯の番号と
メールアドレスが奪い取られて、
私は退屈な会話から開放された。


男の帰った後、
玄関に残された私と
そして両親。


「それじゃ。」


私は何も言わずにそれだけ言って、
今、閉まったばかりの玄関の扉に手をかけた。


「待ちなさい、奈津。」


父の声に、私は振り返らずに手を止めた。


「彼と結婚しなさい。いつまでもそうやってフラフラしていられるなんて思わないで。」


母の言葉に、
私は肩をすくめてみせた。


「絶対に嫌。」


私は言うと、振り返った。

母と目を合わす。

体が怯えて引けるのを、
グッと堪えて睨み返した。


「私に構わないで。もう、一人で大丈夫だから。」


私は言うと、扉を開けて外に出た。



< 53 / 173 >

この作品をシェア

pagetop