極彩色のモノクローム


「あのね。」


誰もいないのをいい事に

私は口を開いた。


マスターは、
カウンターの向こうから出て来て、
私の隣に座った。


その一連の動きを

私はぼんやりと見つめる。


「何。」


素っ気ない問い掛け。


他に客がいない時に

そういえば

こうして会話を交わすなんて
今まであまりなかった気もする。


二人だけの時にしかしない

この喋り方。


嫌いではない。


「あのね。」


私は
もう一度言った。



< 59 / 173 >

この作品をシェア

pagetop