極彩色のモノクローム
10:依頼。
「奈津。」
呼ばれて、
ヒヤリと冷たい手が額に触れた。
私はぼんやりと目を開ける。
暗い室内。
廊下から零れてくる明かりで、
微かに視界に映る
マスターの顔。
「っっ!」
近すぎ!
声にならない悲鳴が、
喉の奥で反響した。
一気に血が上った頬を押さえて、
私は
「何?」
と、冷静さを装って聞く。
「お客さん。お前の絵を気に入ったらしい。」
言われて、私は瞬きをした。
寝ぼけた頭が
全然ついていかない。
お客さん?
絵を…気に入った?
「そいつは、また。」
呟いたら、
マスターはクスリと笑い声をもらした。
「熱も下がってるし、会ってみるか?」
言われて、私は頷いた。