極彩色のモノクローム
パチンと電気が点いて

私は顔を上げた。


「気にしないで、続けて。」


玲奈さんの言葉に、
私は甘えることにした。


スケッチブックを滑る鉛筆が、

差し出された手を描き出す。


「おい、姉貴。人の部屋、勝手に漁るな。」


マスターの声に、
私は再び顔を上げる。


姉貴…?


「アツヤって相変わらず几帳面よね。」


玲奈さんが言った。


「姉弟…?」


呟くと、二人は目を合わせて


「あ、言わなかったっけ?」


と言った。


言わなかったよ。


一言も。


私は

「なるほど。」

と、呟いてスケッチブックに向かった。


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