極彩色のモノクローム
部屋に取り残された私と、
そしてマスターは
目を合わせて息を吐き出した。
そのタイミングがあまりにもピッタリで、
私は吹き出した。
「そうだ。」
マスターは言って、
部屋を出ていった。
すぐに戻って来たその手には、
何やら横に長細い鞄。
私が首を傾げると、
マスターはそれを差し出して来た。
「小学生の時に使ってた筆とか。水彩用だけど、試しに使ってみるには十分だと思うから。」
言われて、
私はそれを受け取った。
名前の欄には
『3年1組 小泉 淳弥』
と書いてある。
「さすがに絵の具は駄目だと思うけど。」
言われて、私は笑った。
「何年前の絵の具?」
問うと、マスターは指折り数えて
「27年前?うわぁ…絶望的だな。」
と言った。
小3は9歳だから…36歳?
「ふぅん。」
私は一人、呟いた。
マスターが首をひねる。
「あ、ううん。一回り以上違うなぁと思っただけ。」
笑いながら言ったら、
マスターの手が私の頭をクシャクシャと掻き回した。
「ありがと。使わせてもらう。」
そう言ったら、
マスターは頷いて
「奈津なら出来る。」
って言ってくれた。