極彩色のモノクローム
店の中には誰もいなくて、
ほんのり温かかった。
コートを脱いで椅子の背にかけると、
私はスケッチブックを開いた。
忘れないうちに下書きだけでも、と鉛筆を滑らせる。
カチャと音をたてるカップに目を上げると、
温かな湯気をたてた珈琲が差し出された。
「手、温めてから描けよ。動かないだろ?」
言われて、
私は鉛筆を置いた。
カップに手を伸ばして、
その側面にそっと触れる。
冷え切った指先が
ジワッと溶けた。