極彩色のモノクローム

スケッチブックには
この店の外観と
その扉の前で、空を見上げる人の姿が
すでに浮かび上がって来ていた。


マスターはそれを見て、

「モデル料取るぞ。」

と言った。


「出世払いで。」


カップを両手で包み込んで、
持ち上げながら言ったら、

「利子で倍額だな。」

って、笑った。


心臓がトクンと音をたてた。


マスターの側にいるときしか聞けない、
甘美な音。


今までした恋とは違う。


甘いだけじゃない。


叶わぬだろう現実に、
痛みさえ伴う。


なのに、惹かれてしまう。


私は、
「そんな、殺生なぁ。」
と笑ってみせて、
珈琲にそっと口をつけた。



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