極彩色のモノクローム

「どう、無理なわけ?」


問われて、私は息を吐き出した。


カップをソーサーに置いて、
スケッチブックの鉛筆の線を指でなぞる。


滲む黒は、灰色に変わった。


「黒も赤も茶も、みんな黒く見えるし、黄色は白く見えるし。今、何色塗ってるのかわからなくなるんだもん。」


私の愚痴に、マスターは目を細めた。

手を拭いて、カウンターから出てくる。


「塗ってみたのかよ。」


言われて、私はマスターの顔を見上げた。

スケッチブックの一番後ろに挟んできた画用紙を、
取り出して差し出す。


マスターは、それを見て
目を見開いた。



< 89 / 173 >

この作品をシェア

pagetop