極彩色のモノクローム
カランと
扉が開いた音で、
私は我にかえった。
マスターはいつの間にか
カウンターの向こうにいて、
振り返った先には
真船さんが手を上げていた。
「いらっしゃい。」
マスターが言って、
私は反射的に水の入ったピッチャーに手を伸ばした。
いつもの席に座った真船さんに、
おしぼりと水を出す。
「久しぶり奈津ちゃん。」
真船さんは言って、
私の左手を取ると唇を寄せてきた。
それを、
甘んじて受け入れる。
別に嫌ではない。
「奈津ちゃんてズルイよね。無防備なのに、鉄壁。」
真船さんの意味不明な言動に、
カウンターの向こうのマスターが笑った。
「何よ二人してさ。」
私がむくれてみせると、
今度は二人で笑い声を上げた。