極彩色のモノクローム
私が卵をといていると
真船さんが呟くように言った。
「あれ?これ買ったの?高そうな絵。」
それを聞いたマスターが笑う。
「それ、奈津の絵ですよ。」
「奈津ちゃんの?」
真船さんの驚いた声が、店内に響いた。
私は気にせずに、バターをフライパンに落としてコンロの火をつけた。
「ねぇ、奈津ちゃん。俺にも描いてよ。」
カウンターから乗り出すみたいにこちらを覗き込んで来た真船さんに言われて、私は顔を上げた。
バターが溶けていい香りがする。
「言い値で買うよ。」
真船さんの真剣な目に、
私は戸惑った。
「そんな…お金もらうようなもんじゃ…」
私が言うと、真船さんは眉をしかめた。