街で君の唄を聞いた

『…手前ぇッ!ええ加減にせぇ!』

『…ッ』

『ふん。彼女の事になると頭にくるようだな。単純な奴め。それが仇となるぞ!』

『………ィ』

『風!?…また貴様か!今すぐ斬り殺してやろう!それがお前の望みだろう!?ははははは!!』

『…リユラ…!!』

『…また…会お…う…』

『リユラ!!!リユラ―――!!』








「彼女は…リユラは死んだ。殺されたんや、ソイツに。しかも未だに見つかっていない。二年間も捜し続けたのに、見つからない。これじゃあ彼女への償いが出来ない。だから俺は行ける限り墓参りしてる。…次はいつ行けるか判らへんけど」

「…さっさと選ばれし者捜して、墓参り出来るといいな」

「簡単にいけばな」



彼は柔らかい笑みを浮かべた。
少しだけ傾いた頭につられて、緑色の髪の毛もサラッと揺れる。

綺麗な髪の毛、透き通る眼。


きっと彼女はこれが好きだったんだろう。




―これが嫌いな奴なんて、可笑しいから。




「……そう言えば、お前あたしにキスしなかったっけ?この浮気者」

「あぁしたね。簡単だよ。レイヒちゃんとリユラが被って見えたんやから」

「目を覚ませよ」

「充分覚めてる」



キスしたことは許せないけど(だってファーストキスだったんだぞ!)、彼は一生彼女に悲しみを抱いている。
だから簡単には憎めないし、そういう関連には容易く触れられない。

コルクが自ら話す時を待つだけだ。



ずっと独り。
彼女が居ない生活は苦しかったに違いない。
きっと無理して笑っていた筈だ。

今まで何回か引っかかったし。


だからもう見せるな。




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