街で君の唄を聞いた


パカ…パカ…



…〜♪



「歌だ…。歌が聞こえる…。やっぱり噂的なのは本当だってことじゃん。森も発光してるし」

「噂的って…。まあ確かに噂かもしれへんけど…」

「ハッ。どうせお前等はその噂しか知らへんやろ?俺は菓子買いながら色々聞いてきたんやで!」

「シッ!五月蝿い赤毛」

「…そんな睨まんでも…」



〜♪〜♪



馬が一歩一歩進むごとに、歌声は徐々に大きくなっていく。
歌声からして、男性。

凄く透き通るような綺麗な歌声で、少しばかり聞き入ってしまった。


――透明。


何も濁らせは出来ない。
見えない膜で覆われ、他の者を侵入させないかのように、唄は続く。
途切れなく。



「大人数でいけば危ない。それに馬に森はキツい。見張る奴と奥に進む奴と分ける。但しレイヒは必ず奥に行くこと」

「強制かよ」

「俺とカヅムは奥。双子とメレナは森の警備。何かあったら直ぐに吐くまで脅せ。手加減はするな。気を抜いたらやられるぞ」

「分かった」

「つまんねー」

「五月蝿いで」

「…行くぞ」






…e♪

…る……と…♪

唄が聞こえてくる。


草を掻き分けて進んだり、木の隙間から奥を見て問題がないかどうかを確認したりしてる。
正直面倒。

けど発光している木は本当に綺麗。
こんなの当たり前だけど見たことないし、かなりデジカメで撮りたくなった。



…キィイン



…?
今何か耳鳴りっぽいものが…。

…ィィイン



「!」



突然音をたてて風が来た。
それと同時に、木も草も音をたてて揺れている。


< 123 / 236 >

この作品をシェア

pagetop