街で君の唄を聞いた



「っあー…。風凄かったな」



…無視キタコレー。

まあ確かに無駄な事は喋らないお二人さんだけども、流石に今のは反応してくれ。
地味に寂しいから。



「なー。少し位反応しろよ。唄も途切れちまったしー…………………またお約束か」



…はいそうです。
ご察しの通り、二人は動いていません。
但しあたしは慌てることも騒ぐこともなく、一人冷静になって彼等を見ている。
ここで双子を呼んだとしても無駄だ。
兎に角あたし一人で進むしかない。







…何か意外と距離あんな…。



…さぁ、舞台に上がる姫が来たよ♪
…早く走っておいでよ♪
…僕等はちゃあんと待ってるから♪



唄が再開された…!

誰だかわからない人が歌ったように、あたしは走り出した。





「…ハァ…ハァ…」

「ようこそ空(クラウン)。ずっと待ってたよ」

「!」



走りきった奥。

そこには濁り気のない綺麗な湖。
その側にいる黒縁眼鏡の男性。

こちらにニコリと柔らかく微笑む。
屈託の無い笑みだ。
何かを企む様子なんてものはなく、ただ純粋に微笑んでいる。

…けど、何故空だということを知っている。
待ってたよ、何て何故来るということを知っている。
そこが不思議でたまらない。



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