街で君の唄を聞いた

柔道だって、空手だって、剣道だって。
強くなるためにやってきた。

女が強くなって、何が悪い?

男らしくして、何が悪い?



「船長!あちらです!!」



船員が船長を呼んだか。

船員がピッと指して言うと、後ろから人が出てきた。

さっき投げられた大男をチラリと見れば、此方に目をやる。



「投げ飛ばしたのは、君かい?」

「いや?俺は傍観者だった」



口角を少し上げて話すヴィーノは、たっぷりと余裕があるように見える。
そして体を此方に向けて、言った。



「コイツは、強ぇぞ?」

「その自信はどこから?」

「さぁな」



銀髪で、アイパッチをしていて、如何にも船長ですと判るような服を着ている奴。

やっぱりアイパッチは定番なんだなぁ。



「お嬢さん、剣を鞘に収めて?お茶でもしないかい?無論、君も一緒だよ」

「今時そーゆーのに引っ掛かるとでも?生憎、今はお茶気分じゃないんで」

「残念。折角仲間になってくれた人達に会わせようとしたのに」

「…正直、気持ち悪い程鳥肌たつ。キモイ。今から身投げしてこいよ」



そう言うと、顎を持って密かに笑い出した。



「君ほど強気な女性には出逢ったことが無い!ククッ、是非とも仲間にしたい!」

「却下する」



もえ抑えきれないのか、腹を抱えて笑い出した。

身を屈めて、ぷるぷるしている。

つーか誰がてめーの仲間になるか。
冗談じゃねぇよ。

寧ろ叩きのめしてぇ。
隙を突いて殴りてぇ。
蹴り飛ばしてぇ。

そんなイライラする自分を余所に、クックッと喉を鳴らす敵。
マジですんげぇイラつく。



「怒りのオーラだねぇ。もっと楽しい明るいオーラを出せば素敵なのに」



…ホストの人って、こんな感じなんだろうか。
ヘラヘラして、キザな感じで、女を軽ーく誘うような男。

正にホストだ。

こんな奴が人攫いだとは外見だけだったら判らない。外見だけだったら。

…性格がこれじゃあ、人攫いだというのなら頷ける。

自分一番って奴を捻り潰すのって、楽しいだろ?


え?自分だけ?

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