街で君の唄を聞いた
「…今まで攫ってきた子達に会わせようじゃないか。此方へどうぞ?」
ニッコリと笑う姿は悪人とは言えない。
寧ろ善人。
たとえ善人でも、中身が悪人だったら、相当の偽善者だ。
そしてコソッとヴィーノが耳打ちしてきた。
「一応あった方が良いだろ。どうせこっちの事はラグアスに全て見えてるだろうし」
コクリと小さく頷く。
確かに敵船の実況をしていたのはラグアスなわけだし、多分連れ去られたとは見てないだろう。
「茶ぁ位は、うめぇの出せよ」
「勿論。…そこの倒れてるの、次の目的地に着いたら降ろしといて。あと出航は…まぁ無理だろうけど、舵は取らないで。あ、攻撃禁止。やったらいくら海でも突き落とすからね」
あぁ、解った。
コイツ腹黒いんだ。
コツコツと鳴り響く船内。
今は三人のものだけだ。
そしていつやったのかは知らないけど、いつの間にかヴィーノは元の姿に戻っていた。
…そういや、コイツの名前知らね。
まぁ聞いても多分忘れるだろうし、どっちでもいいんだけどね。
「そういえば、君達どうやって此処に来たんだい?」
「どうやってだと思う?」
「瞬間移動」
「お疲れ様でした」
後ろで笑いを堪える人が一名居ます。
ちょっと押さえ切れてない。
「あぁ、そうだ。名前、聞いてなかったね」
「教えねーよ?」
スペースが開かないぐらいの超即答。
別に教えても、意味ない。
人生一期一会でしょ。
「じゃあ此方から自由に呼ばせてもらってもいいんだね?」
「あだ名によりけり」
「んー………。じゃーねー…………怪り「言ったらお前の首絞めるからな」
今コイツ絶対怪力女って呼ぼうとした。
うぜぇ。
果汁100%じゃなくてうざさ100%だろ。
甘いものなんぞ無い。皆無に近し。
「素直に教えればいいのに」
「チッ。謀ったな」
「何とでも呼べばいいよ。僕はレンム=ユレリア。ユレリアでもレンムでもいいよ」