街で君の唄を聞いた

少々苛つきを感じながらも、ムスッと可愛げゼロに名前を言った。



「神志、冷灯…」

「珍しい名前だね。そっちの君は?」

「ヴィーフェル=ノクラムだ」

「そっか。レイヒにヴィーフェル、宜しく」



レンム=ユレリア、ねぇ…。

胡散臭い偽善者とでも覚えておこう。
否、ホストがいいかな?



「正式に言えば、攫った、というわけではなくて、誘ったんだよね〜。やっぱりここの海も僕の領海にしたいし。強くなくちゃね?」



何だか、声のトーンが少し落とされた様な…。

いやいや、気にしない事にしよう。
これ以上謎は増やしたく無い。
謎は追求しないことにしよう。絶対。



して、突然ユレリアが止まった。

右側には一枚だろうと思われる扉。

もしかして、この先に捕らえられた人達が居るんだろうか。


ちょっとした期待を胸に、ユレリアがドアを開けるのを待った。





…ん?

一向にユレリアが開けるような感じじゃない。

え?あたしが開けるのか?は?



「仕様がないなー。今回だけだからね?」



そういったら、ドアノブに手をかけた。

やっぱりあたしが開けなきゃいけなかったのかよ!
どんだけ人使い荒いのこの人!


ユレリアとドアの間からは、多少の話し声が聞こえる。

まるで内緒話でもしているかの様だ。

ユレリアに続いて入ると、またかという顔を、何人の人にされた。



「…この人達は、お前が脅して閉じ込めたのか?ユレリア」

「あららー。君は見抜いていたか。ま、働かせてるけどね。陸に着いたときに買い物させたりだとか、船の掃除だとか。偶に忘れたりして置いていったりするんだけどね」



を、聞いた瞬間。



「痛ッ」



ユレリアの背中をめいいっぱいの平手打ちで叩いた。

それを見て聞いた人は吃驚してた。



「それで?君達はこの子達に会ってどうするつもりだったの?」

「え、一つしかねぇじゃん。お前船長のくせに阿呆なんだな。助けるに決まってんだろーが」


目をパチクリとさせている、目の前の人。

どうやら考えていることとは違ったようだ。

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