街で君の唄を聞いた
そしたら、笑い出して。
マジでコイツ逝っちゃってるんじゃないかと思った。
「ハハッ。じゃあ一つ、話をしよう」
口角を上げたまま、歪みなく話し始めた。
「一人の男の子が旅に出ました―――
男の子は強くなりたい。
ずっと、昔からの夢は、目標は憧れていた、隣家の兄だった。
いつも仲良くしてたし、本当の兄弟だねと、皆から言われていた。
しっかし、何故か忽然と居なくなった。
男の子は、“きっと旅に出ちゃったんだよ”と、皆にも、自分にも言い聞かせた。
…だけど、ある事によって、打ち砕かれる羽目になる。
死体のまま、隣家に戻ってきた。
身元確認があったのかは判らないが、腐ってはなかった。
直ぐに葬儀は行われた。
男の子は体中の水分を出し切る程、泣きじゃくった。
次の日からは、ずっと修行に明け暮れて、一週間も帰らない日もあった。
そして隣家の兄が亡くなって、六年後、男の子は旅に出た。
旅先で会った奴等とか、凄く仲良くしていた。
街で開かれる大会とかにも参加して、強くなっていった。
ただ、足りないものがあることに気付いた。
強いだけでは駄目。
男の子は探し求めた末、不運にも右目を失った。
それでも、探し求めた。
…後に思うようになったんだろうね。
“何で生きてるんだ”
自分がこの世界に居ていいのかさえ、判らなくなるほど。
強くなるなんて野望も消え去った。
飲み食いもせず、餓死だってしそうになった。
それを寸前で止めた人が目の前に現れた。
“君は、何が欲しい?”
背の高い男が言った。
男の子は、何も答えられなかった。