街で君の唄を聞いた
声なんてどう出せばいいのか、忘れてしまった。
男の子は変わりに目で訴えた。
今までの様な優しい瞳ではなく、獲物を喰うような鋭い瞳で訴えたんだ。
“道を見失った”、と。
男がそれを理解したのかは解らない。
だが男は手を取って、そっと微笑んだ。
そして男の子は徐々に回復していったんだ。
どう?いい話でしょう?因みにその後男の人亡くなっちゃったんだけど。何かしっちゃかめっちゃかかもしれないけど、本当にあった話だからねぇ」
黙って話を聞いていたけど…。
それは、
“男の子は探し求めた末、不運にも右目を失った”
「ユレリア…。お前の事じゃないのか…?」
声を発しただけでも割れてしまいそうな瓶を扱うように、そっと話し掛けた。
怖いもの、ではなく、怯えているもの。
ユレリア、お前は…。
「…ま、話せば当然解っちゃうもんね」
軽く俯いて、目を伏せるユレリアは、孤独に見えた。
「正解正解。僕には右目が無いよ。とある取引の所為で失ったんだ」
ユレリアはペラリと右にあったアイパッチを捲ると、左目を閉じた。
代わりに右目を開けたら―――
目が、無かった。
「目が見えないのと、目が無いのとは当然違う。何で無くしたのか、分からないんだけどね。今はもう慣れてるからどってことないんだけど」
軽く笑うユレリアは、どこか悲しく見える。
何があったのかは、こっちはもっと分からない。
でも多分、話の流れからしてコイツは悲劇にあったに違いない。
…あ、そういえば、この捕虜の人達放置してた。
どうしようかと頭を捻って考えるけど、全くもって浮かばない。
一人二人ならまだしも、大勢だからコッソリなんて出来やしない。
攻撃をするなとはユレリアは言ったけど…。
何か良い方法ないのかなぁ。
「あ、そうだ」
「うん?」