街で君の唄を聞いた
夢は幻と思いなさい
西大陸、ヒュレイド。
代々女性によって創られた地。
別名、“神聖なる地”。
女性が納める事からか、呼ばれたのかもしれない。
「ヘンツェラに着いたな。今最優先すべき事は選ばれし者を王女に聞きに行く事だ。自分の事は後回しにしろ」
「聞いて分かるもんなの?」
「お前は阿保か。既にジュマルドが各大陸に連絡をしている。それに選ばれし者は殆ど王、又は王女と一緒に住む規則が昔っから存在しているんだ。それに選ばれし者は狙われやすいしな。騎士や守る奴等が居た方が安全だろ」
「あー。だからお前等は城に住んでたのか。なーる」
「俺はひとまず船員に色々伝えてくる。街に入る前に待っていろ」
まー、あんたらは自分の身は自分で守れるでしょうけどねー。
…ラグアスは、仕様がないよな。
だって、滅ぼされたんだから、どこにも居ようが…。
あれ?
各大陸の城に一緒に住む筈だけど、月読族はどこの大陸に属してた?
そしたらラグアスは守られてる筈なのに…。
ひっそり暮らしてるのも可笑しいし…。
“生きててほしい?”
何故、月読族は滅ぼされた?
ラグアスはいっそ自分も死んでしまえばいいと思った?
何を、考えてる?
「――!冷灯ッ!!」
「何だよラグアス――」
「ッ」
バッとラグアスがこっちにやって来たと思えば、いきなり抱きついてきて、地を蹴った。
ズサァッという地面を滑る音が耳の近くで聞こえた。
と同時に、足元で聞こえた地面が抉れる音。
何が起きたのかは、ラグアスをどかさないと判らない。
「げほっけほっけほっ…」
「ラグアス!」
「だいじょぶ…?」
あたしには何ともない。
その代わりにラグアスの足には短剣が刺さっていた。
一本は刺さって、もう一本は脚を斬っている様だ。
「何やってんだよ!?お前時間止められるだろ!?」
「ははっ…忘れてた…。冷灯を…守りたかった一心だったし…」
「どうした!?」
「ヴィーノ…!」
大声で叫んだからから、ヴィーノが血相を変えて走ってきた。