街で君の唄を聞いた

+メレナSide



北大陸…か。
雪降る大陸に行くなんて、思って…はいたかも。

東大陸だから近い言えど、北大陸は他大陸から来る奴等を嫌ってるしな…。



「メレナ」



ひょっこりと顔を出したのは、コルクロット。
深緑の綺麗な短い髪がサラサラと揺れる。
俺の短髪とは大違いだ。



「さて。問題です。何故俺はメレナの元へとやって来たのでしょう?」

「は?」

「一!メレナは独りで居るのが寂しいと思ったから!二!メレナが好きだから!三!重要な事を伝えに来た!どれだと思う?」

「四、コルクが部屋を間違えた事に入って来た瞬間気付いた」



なんて言ったら、困った顔をして、頬を人差し指でポリポリ掻きだした。
まるで“参った”と言うかの様だ。



「…じゃあ五、姉が気になってどうなっているか見に来た」



――――!



「コルクロット…!」

「聞き出すつもりはないよ。北大陸なんて言葉が出たからさ、君のお姉さんが気になっているんじゃないかな〜って思っただけなん。それにまだ時間はあるしね。気持ちを落ち着かせる時間が折角あるだから、色々考えればええよ」

「…お前の恋人は、北大陸出身だったろ?気にしないのか?」

「メレナみたいにズルズルと過去を引き摺る程子供じゃないよ」

「っんだと…!?」



勢い良く立ち上がって、コルクロットの胸倉をしっかり掴む。

だがコルクロットは怒った顔をせず、逆に眉を垂れ下げた申し訳ない顔をして、胸倉を掴んだ右手をソッと左手で覆った。



「…気にしないと言えば嘘になる。だけど何時までも気にしていては進むことは出来ないんや、メレナ」

「…んなの、もう知ってる。進めない俺が居るなんて解ってる。…でも仕様がねぇだろ…」



スッと自然に右手が離れた。
もう力を入れる気を無くしたからだ。

だらりと下がる右手を、コルクロットに掴まれた。

そしたら目の前な持ってきて―――、



「君は独りじゃないんやからさ。相談という手があるでしょーが」



“ね?”


微笑んだまま首を傾げながら、問うコルクロット。

何故、コイツは。


< 173 / 236 >

この作品をシェア

pagetop