街で君の唄を聞いた





――泣きそうな眼で言う――





コルクロットは手を離すと、半回転した。
そしてドアに向かって歩き出したと思えば、ピタリと止まった。



「……切れた糸は、二度と直らない。それは覚えといてぇな」



パタン



一体コルクロットは、俺に何を伝えたかったのだろうか。

切れた糸なんて、直るわけ…。


「………どーしたらいいんだろうな…」



今俺は、ただ立ち尽くす事しか、床を見る事しか出来なかった。

何も、考えたくなくて。

頭の中を真っ白にしたくて。

バフリと音を立ててベッドに寝っ転がった。


窓から入る日差しが、何時もより眩しく感じて、目を閉じた。
何も見たくない。
何も聞きたくない。

時計の音でさえ、今は何も聞きたくない。



コツン コツン



何の音だろうか。
何か近付いてくる様な音?

普段の軽装備の鎧はしていないが、一応敵だったら困るので、剣を構える。

鞘に右手を滑らせる。

まだまだ音は鳴る。

俺を煽っているかの音だ。憎たらしい。
俺はそこまで気が長くないんだ。


…音はまだ続く。
段々と近付いて来ている感じがする。

そして音は止まった。
それでも俺は体制を崩さない。



…キィ



音のした方を振り返る。
振り返った視線の先は窓。

誰も居ない。誰も居ないのに、窓は開いていた。



「…何だ、コレ」



小さな観葉植物の隣に置いてあった赤く小さな袋。
何かの罠だと分かってからは遅い。
取り敢えず剣を抜いてつついてみる。



ジャラリ



…開けて直ぐに罠に掛かることは無さそうだ。
こういった類は罠を仕込んでも、数分で破裂するからな。



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