街で君の唄を聞いた

袋に入った物を取り出す。



「…これは…!」



俺には似つかわしくない、ルビーに近い色の、ジェランドの腕輪。
鋼の部分には名前が刻まれている。



「…メイラ……エセネロ…」



どうして、姉の物が。
どうして、此処に。
どうして、俺の元に。


今俺は、北大陸に居るというのに、姉貴はどうして知っているのだろう。

それにさっきの音。
明らかに人が近付いて来る音だった。


もしも空気を歩けるならば…。

いや、俺は羽もないのに空を自由に飛び回る奴は見た事はある。
だが歩く奴なんて、見た事ない。

…でも音はした。
響く音が、したんだ。



コンコン



「メレナ、飯」

「ん。今行く」

「うわっ、何そのメレナに不釣り合いなブレスレット」

「自覚してるのに実際に言われると結構傷付く。つか傷付いた」

「じゃあそこまで傷付かないんじゃないの?」



…最もな事を言わないでほしいな。
うん、いや、まさかのレイヒ登場だったから、心の準備が出来てなかっただけだ。
そういう事にしよう。


…はぁ。
そんな軽い溜め息をつくと、いきなりレイヒはニヤニヤし始めた。



「気持ち悪」

「あ、ごめん自覚済み。やー、あのさ、メレナの彼女から貰ったブレスレットなのかなーって思っただけ」

「………………はいはい、飯行こうね」

「何その間と呆れた言葉!当たってんのか!?」

「もうこの際なんでもいーっつーの」



レイヒの背中をドンドン押して、部屋から出て行く。


子棚にブレスレットを置いて。


今は考えないでおこう。
いつもの俺でなくなってしまう。


腹減ったな。
早く飯食いてぇな。



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