街で君の唄を聞いた

+冷灯Side



夕飯の用意を手伝いましょうかと言ったら、全力で拒否られた。
折角城に泊まらせてもらえる、とか思ったら、何かしなくてはいけない恩返し心が反応した。

なのに拒否られるって…。



「まぁ美味いしいっか」



今は夕飯。
豪華に用意された食事を頬張って呟いた。



「まだ沢山ありますので、どんどん食べてくださいね」

「是非頂きま「喜んで食べさせて頂きます!」



あぁそういえば、レザは王女にどっきゅんメロメロの一目惚れだったね。

仕様がない、西大陸に居る間は大目に見てやろうじゃないか。
…但し手を出すのは認めない。
手を出した時点で犯罪とみとめ、即刻東大陸に戻す。
結局は戻るのだから問題無し。

うん、でもね、レザ。



「レンム!折角皆様と数日過ごすという貴重な時間に、何故遅刻してくるのですか!」

「貴重なのかもしれないけど仕様がないでしょ〜」



ヘラヘラ笑って遅刻してきたユレリアを怒る王女様。

女の“勘”としては、多分王女はユレリアの事好きだと思うよ。
それに好きな奴に素をみせるって、そういう証拠…だとは思うよ。うん、多分。

ユレリアはきっと気付かないだろうね。

だって鈍感だから。



「なぁ、レイヒ」

「何?」

「最初に会った日に比べてさ」

「うん」

「…妄想癖出てきた」

「………ごめん、カヅム。今よく聞こえなかったんだけど。もっかい言って」

「妄想癖出てきた」

「あぁそこ普通に言っちゃうんだ。いいよ、そこがきっとカヅムの長所だ。あたしは気にしないぞ。それに悪気があって言った訳じゃないんだよきっと。うん、気にしないことにしよう」

「……………手遅れだったか…」



手遅れも何も、あたしに妄想癖なんてないよ。
ないない。ないさ。絶対ない。
ははは、そんな事してたら既に口からボロボロ出てたに違いないよ!


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