街で君の唄を聞いた
「…歌が途切れた」
「なんつーか…まぁ聴かなくていい…ような」
「冷灯こっち」
「…ぅわっ!お前怪我してるくせに何走ってんだよ!歩け!」
「じゃあ早歩き」
「…うん、君ってさ、自己ち…いや、何でもない」
早歩き――まぁ歩いてはいるけど、早歩きっていうか、ただ大股で歩いてるだけな気がする。
気のせいなんかじゃない気がするけど。
えっ、しかもこんな屋上?に繋がるとこなんて、勝手に入っちゃっていいわけ?
駄目だよな?なぁ?
しかも何の躊躇いもなく扉開けちゃったよ。
屋上的な所に出ると、それはまぁ風が多少強く感じますよ。
でもそれ以前に思った事が一つある。
「…あぁ、聞こえたんだ?」
白いフードを被った女の子が居た。
背は割と小柄で、女性というよりも、女の子の表現がピッタリだ。
「…君は、何の歌を歌っていたんだ?」
「さっきの歌はね、反聖歌(ネモストラル)の序章だよ。反聖歌は一部な人にしか知らないの」
「どうして知ってるんだ?」
「お兄さん、面白いね。反聖歌を教えてくれた人は、元々聖歌(ストラル)を作曲してた人なの。聖歌より反聖歌の方が早く出来たらしいよ?」
「…じゃあ何故俺達にしか聞こえなかったんだ?」
「反聖歌が聞こえる人には、理由が二つあるんだ。一つはね、歌…ううん、唄を歌う人。そこは多分察してたんじゃないかな?それで二つ目がね」
…ズキン…ズキン…
何でだ。
何で頭が痛い。
何か銅器で殴られる様な感じもある。
聞きたくないのか?
…まさか。
寧ろ聞かないと、ずっと気にしたままだ。
でもどこかで否定している。
どこだろう。
「今――――何か重い足枷を持っている人。見えはしないけどね。なんて言うか、心が縛られてる、のかな?だから――」
「それ以上言ったら、仕返しをするぞ」
「あぁ、その足?ごめんね、貴方を殺すつもりは無かったの。ホントは…そこの子を殺そうと思ってね?上からの命令なんだ」
「どうして狙うんだ」
「それは秘密ー。理由なんて言えないもん。言ったら私が殺されちゃうもん」