街で君の唄を聞いた
“そこの子を殺そうと思ってね?”
頭の中で、何回もリピートされる。
確かにあの時、ラグアスはあたしを庇って足を怪我したけど、あたしを庇ったって事は、狙われてた。
狙われたのは、空だから?
異世界から来た人だから?
そんなに、珍しいの?
珍人種?
「クスクス。いいなぁ、困った人の顔見るのって。ざまぁみろって思っちゃう。ねぇ、貴方、異世界はどんな人間が居るの?貴方よりもっと面白い人が居るの?世界は?建物は?」
「…ろ」
「魔法なんて無いのでしょう?どうやって生活してるの?あっ、眼の色って茶色?貴方のその眼は珍しいのよね!」
「やめろ!!」
血が沸騰しているように、熱い。
全身が、熱い。
聞かれたくない。
だから、だからだからだから…。
「痛っ!」
「グーじゃないだけマシと思えよ!つーかうるせーよ!!黙ってろ!!」
頭を平手打ちした。
ホントはグーにしようと思ったけど、そこは凄く抑えた。
女の子なんだし。
「質問したから答えてるだけなのにぃ…。殴ったりする男の子みたいな子、苦手だなぁ」
「お前の事情とか知るか!!俺の事知らねぇくせに、俺の世界に興味なんて無いくせに、聞いてくんじゃねぇよ!!」
「いいじゃない。知りたいんだもの。知らない事を知ろうとして、何が悪いの?」
…確かに知る事は大切だ。
だけどそれとこれとは話が別だ。
…ヘラヘラしやがって…。
余裕ぶった笑みが気持ち悪ぃ。
…あ?何だ…この羽みたいな…。
「…!」
何時…この子の後ろに…。
「クルト」
「あっ、ヘミヌさん!」
「反聖歌は街で歌うなと、何回も言ったでしょう?」
「だって歌いたかったんだもん!それに、ホラ、この人達!力のある人達!二人も聞こえてたんだよ!」
クルトと呼ばれた子が、あたし達二人を指差すと、ヘミヌと呼ばれた女性が、此方に顔を向けた。
特に驚いたりする様子もせず、ジッと見ている。
目が動くだけで、微動だにしない。